婚活「宅男」(シーン3−2)



 結美は、次の男のところに行こうとした。しかし、「結美さん!」と名前を呼び
止められた。誰だろうと思いつつも振り返った。そこにいたのは、年齢は30代後
半だろうか、髪がボサボサで眼鏡をかけた小太りの男がいた。よれよれのタートル
ネックの服を着ている。かばんには、何やら人形?いや、最近流行の初音ミクのフ
ィギュアだ。プロフィールカードを見たときには気にもしなかった男なのだろう。
結美は、何だろうと思いつつ、答えた。                   

結美「はい。何でしょう。」                        
宅男「あのー。」                             
結美「はい。」                              
 結美は、相手の男がハッキリしないので、そのまま適当に離れようかなと思った。
だが、                                  
宅男「もし良ぉろしければ、僕とお話しませんかぁぁ。」           
 いきなり声のトーンが上がり、結美はビックリした。            
結美「えっ、えっと。」                          
 結美は、やばい雰囲気を感じたが、とっさに言葉が出てこなかった。     
宅男「ご趣味は?」                            
結美「あっ。はい。お料理とか好きですけど。」               
 結美は料理がそこまで好きではないのだが、成多との話が頭に残っていて、パニ
ックになったまま、思いもしないことを答えてしまった。           
宅男「美味しい料理がつくれるんですか。嬉しいなあ。」           
結美「は、はい。」                            
 大分、落ち着いてきた結美だが、宅男と話すたびに、警戒心が膨れ上がっていく。
どうにかして、この場から離れなければと思い始めた。            
宅男「いやあ、僕、アニメが好きで、ローゼンメイデンってアニメ知ってますか?」
結美「えっ。あははっ。知らないかも。」                  
宅男「あれに出てくる水銀燈が好きで。これ見てくださいよ。」        
 結美は、興味は無かったが、無下に断るのもやばいような気がして、適当にあい
づちをうっていた。                            
結美「あっ。はは。」                           
宅男「これも見てください。」                       
結美「はっ。はあ。」                           
 結美は戸惑っていた。宅男が一方的に話すのを、あいづちをうちながら、どうし
ようかと思っていた。                           
 が、宅男の話がいきなり止まる。そして、宅男は一点を見ていた。あれっ、何だ
ろう?と思い、結美もそちらを見た。                    

 そこには、ロリータファッションに身を固めた1人の女がいた。会場に入ったと
きは見なかったので、遅れてきたのだろう。婚活に場違いな恰好だからか、一際目
立っていた。                               

 宅男はその女を見ていたのだが、突然、席を立ち、その女の方へ走り出した。ど
うやら、ロリータファッションの女に興味を示したらしい。結美は、宅男が物凄い
勢いで走っていくのを見ていた。                      

結美「な、なんなの?」                          
 結美は、宅男から離れられたのは嬉しかったのだが、自分に興味を無くした男の
ことと、今まで費やした時間のことで複雑な気持ちになり、そのまましばらくたた
ずんでいた。                               

  シーン3以降は、現在一部公開です。
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