操人形〜第2幕〜(シーン5)
和服姿の女がいる。人形を操っていた女性だ。うつむいていた顔が上を向いた。
その眼は、何かを思いつめたような決意に満ちていた。
「トン」太鼓が鳴る。小さく、小さく、何度もなる。「トントントントン」太鼓
の音が小刻みになっていった。
女が動いた。少し歩いた後、盃の置かれている台の前で止まった。盃にはなみな
みと何かが注がれていた。女はしばらくそれを見ていた。そして、おもむろに盃を
持ち上げ、盃を上にかざす。まるで、神に盃を供えるように。
「ドン!」太鼓がなった。
結美「ああっ。何てことでしょう。徳川様から出された御触れが私たちの仲を引き
裂こうとする。」
「ドン!」太鼓がなった。
結美「私は領主の姫、彼は穢れを引き取る人形師。お父様は、私と彼の身分違いの
恋を許してくれない。」
「ドン!」太鼓がなった。
結美「ああっ。この世で結ばれないのなら、いっそ。次の世界では、貴方と結ばれ
ることを願って。」
女が盃を胸の前まで下した。そして、盃を、口の前に持ってきた。盃に口をつけ
る。少しした後、盃から口を離す。
「ドン!」太鼓が一際大きくなった。
それと同時に、女がバタリと倒れた。舞台の幕が下りてきた。人形劇の第2幕は
終わった。
シーン3以降は、現在一部公開です。
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