操人形〜第1幕〜(シーン1)



 闇を照らす明り、その下に1人の男はいた。固く結んだ唇、瞳は何も映していな
いかのようだ。着物姿で、刀を持っている。「許さぬ!」と高い声が響く。と、同
時に刀の銀色の光が空を切る。そして、少しの静寂がおとずれる。       

 しばらくして、太鼓の音がトン、トン、トンと鳴り始めた。男は、下を向いてい
る。太鼓の音はだんだん早くなるが、男は微動だにしない。          

 すると、突然、周りが明るくなった。そして、和服姿の女が表れた。その手から
伸びた糸の先には。人形。先ほどの男は、女が操る人形だったのだ。長い髪の間か
ら見える女の表情は、無表情。いや、白い面だ。飾り気のない表情とは裏腹に、き
らびやかな服に身を包んでいる。どこかの国のお姫様か。           

 「ドン!」太鼓が鳴った。そちらを見ると、男が太鼓を叩いている。男は動く、
動く、動く。最初はゆっくりだった太鼓も、すさまじい早さで叩かれている。  

結美「ああっ。お父様、なんで・・・。」                  
 女が下を向いた。そして、ややあった後、顔に手をあてた。泣いているようだ。

 そして、太鼓の大きな音とともに、舞台の幕が下りてきた。人形劇の第1幕は終
わった。                                 
  シーン2
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